住居侵入罪・不退去罪
<山口各論>
第一款 総説
1 保護法益 住居権説 平穏説
(1)判例 旧住居権説 戦後 (2)学説 平穏説 新住居権説 多元的保護法益論 (3)許諾権説の展開 平穏説 実質的利益説
2 罪質
継続犯 状態犯 不退去罪 滞留の許諾権? 継続犯とした場合の不退去罪
第二款 客体
1 人の住居 住居の意義 事務室 艦船 車両 ホテル 離脱したもの 死者 判例 東京高裁・昭和57年1月21日
2 人の看守する邸宅、建造物、艦船
付属地 看守
3 付属地
判例 小学校の校庭 住宅
第三款 住居侵入罪
1 侵入の意義
判例 最判・昭和58年4月8日 学説 正当な理由がないのに プライバシー侵害
2 許諾権
(1)邸宅、建造物、艦船 (2)住居 複数の意思 全員・一人・現住者 (3)承諾の対象、推定的承諾
3 許諾と錯誤
第四款 不退去罪
住居侵入罪 継続犯 状態犯 未遂犯 包括1罪
<新司法試験論文えんしゅう本〈6〉刑事系刑法 平成20年 p353>
1 夫の不在中に妻の承諾を得て侵入
2 万引き目的
3 ガスやと偽って住宅に侵入
1
山口各論: 新住居権説 ・一人
新住居権説
(反対説)事実上の平穏を保護法益とする見解
↓
許諾権的利益を保護せざるを得ず、許諾権者に反する立ち入りを平穏を害しないとして認めるのは妥当ではない。
※事実上の平穏が曖昧かつ無限定になってしまい独自性を見失う。
※「個人の意思から法益を分離するのは妥当ではない」(柴田2006)、「法益を共同生活者全員としつつ住居侵入罪を個人的法益に対する罪としており矛盾」(辰巳参考答案1)
↓
誰を入居させるかの自由を保護法益するとするのが妥当。
↓
但し許諾権者は通常複数存在しているため、そのうち誰の許諾まで要するのか問題となる。
許諾権者自身はその滞留が他の居住者の意思に反しても本罪は成立しない。
↓
許諾権は他の許諾権者との関係で相互に制約されている
よって、許諾権者一人の許諾があれば良い。
(参考:山口各論 p122-、補足:柴田 孝之(2006):『論文基礎力養成講座 刑法』)
2・3
山口各論:錯誤に基づく許諾・法益関係的錯誤
法益関係的錯誤による。
↓
誰を入居させるかの自由を保護法益としている
↓
「誰を入居させるか」について錯誤がない以上は有効な承諾があったと解する(3のケース)
2のケース
概観から犯罪目的が判別しないケースでも個別に許諾をしていれば認めていた
↓
推定的許諾があったと解する
(参考:山口各論 p122-)
<柴田 孝之(2006)『論文基礎力養成講座 刑法』 19-1 p268>
4 警備員に話をつけ、校長を困らせる目的で学校に侵入
承諾権者=学校の管理者=校長
警備員等門衛・守衛の合意は上記の承諾権者と合致する限りにおいて有効である
↓
(推定的)許諾があったと認められない
(警備員がむしろ共犯になりうる)
(参考:山口各論 p124-)