山口厚(2010) 財産犯の復習ノート
山口厚(2010)の復習ノート
<財産犯の全体像>
個別財産 |
領得罪 |
直接領得罪 |
移転罪 |
強取罪 |
窃盗罪(動産・有体性) |
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親族244 |
不動産侵奪罪 |
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不動産 |
親族244 |
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強盗罪
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2項 |
2項・不動産 (1項・不動産:西田説等) |
親族244 |
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交付罪 |
詐欺罪 |
2項 |
不動産 |
親族244 |
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恐喝罪 |
2項 |
不動産 |
親族244 |
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非移転罪 |
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横領罪 |
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不動産 |
親族244 |
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間接領得罪 |
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盗品等関与罪 |
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親族257 |
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毀棄・隠匿罪 |
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器物損壊罪 |
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全体財産→詐欺罪(少数) |
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背任罪 |
2項 |
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親族244 |
(出所: 山口厚(2010) p168に加筆)
第6章 財産に対する罪
第1節 財産犯の体系
1 客体としての財産
2 財物と財産上の利益
財物 動産 不動産
3 個別財産に対する罪と全体財産に対する罪
背任罪 2項犯罪
4 領得罪と毀棄罪
領得罪と毀棄罪 移転罪と非移転罪
第二節 窃盗罪
第一款 総説
他人の占有 自己の所有物 財物罪 利益窃盗 営業秘密の保護 強盗・詐欺・恐喝・横領との境界
第二款 財物
1 有体物
有体性 管理可能性 刑法245 大審院 有体性(多数説・通説?)
管理可能性概念では財物の範囲が広くなりすぎる。 例:電気以外のエネルギー、債権、情報も含まれるが利益窃盗を不可罰とする現行刑法と矛盾 ↓ (管理可能性からも限定を加える立場もあるが)財物概念の明確性から有体性説が妥当である。 ↓ 財物は空間の一部を占める有形的存在を持つものに限られる(245条は特別規定と解する)。 参考: 山口厚(2010),p170 |
2 不動産
3 人体・臓器など
4 財産的価値
判例 所有権の目的 金銭的・経済的価値 交換価値 使用価値 積極的価値 消極的価値
消極的価値(使用されないように手元に置く)を含めるか? →日本銀行が消去のために回収をした日本銀行券について、廃棄処分まで保管する利益も財産的価値から排除する理由はない。 参考: 山口厚(2010),p174 |
第三款 占有
1 総説
他人の占有の要件 事実上の支配 代理占有・占有改定・相続 遺失物等横領 横領罪との区別
2 占有の存否
占有の事実 占有の意思 占有の限界 支配の事実的可能性 支配の事実的可能性がない場合 社会観念? 占有の意思の推認 判例
3 占有の帰属
複数のものが関与する場合 共同 上下関係 支配関係 封 委託者
封を開いて、内容物を領得する場合 ↓ 委託者に残された内容物に対する占有が侵害されている ↓ 窃盗罪が成立 ↓ 物自体(全体)を領得する場合も同様に解するのが妥当。 (反対説:前者は窃盗罪・後者は横領罪、両者とも横領罪が成立) 参考: 山口厚(2010),p180 |
4 いわゆる「死者の占有」
事例A:当初から奪取の意図で殺害→奪う 強盗殺人(判例・学説)
事例B:殺害後に奪取 遺失物等横領罪(判例)
事例C:殺害後に第三者が奪取 窃盗罪(直後、判例)
死者は権利主体としては存在しないことや、肯定したとしても範囲が不明瞭であり感覚的な基準により決せることになり恣意に流れる危険性がある。 ↓ 死者の占有は否定し(事例BやCは)遺失物等横領罪の成立の肯定にとどめるのが妥当である。 参考: 山口厚(2010),p180 |
第四款 窃盗罪の保護法益
1 他人の財物
他人の財物 の=所有 無主物 無主物先占 葬祭対象物 190条 納棺物
(学説上、窃盗罪も成立するとする見解があるが)葬祭の対象とされた納棺物についてはその所有権が実質的には放棄されたものとみなすべきである ↓ 領得しても納棺物領得罪(190条)のみが成立すると解する(判例に同旨 ※大判大正4年6月24日) 参考: 山口厚(2010),p183 |
2 本権説と占有説の対立
刑法242条の規定 客体の広がり 自力救済 民事法
3 判例の動向
本権説から占有説 従属から独立 恩給年金 債権取立ての脅迫
4 学説の動向
本権説 中間 平穏な占有 合理的理由のある占有 占有説
5 本書の見解
本権説によると自力救済を肯定することになるが、民事紛争解決のための法制的制度を用意していることが無意味になる。他方で現行法が端的に「他人が占有する物」を窃盗罪の客体として規定しない点、権原に基づかない占有を所有者が取り返すケースなどあらゆる占有侵害に当罰性があるかは疑問があることを踏まえると占有を一律に保護するのは保護の範囲が広くなりすぎる。 ↓ 中間説の立場に立ちつつ保護に値する占有の限界を画するか検討するのが妥当である。 民事法上認めうる利益が存在する合理的な可能性がある占有まで保護をすべきである。 ↓ 即ち、権利に基づく場合に加えて、同時履行の抗弁権による引渡し拒否などの利益など、民事法上認められる利益を備えた専有であれば保護されるべきである。 また、所有者との関係で占有者に引渡しを拒絶する利益を認められる場合も含むと解する。 他方で、窃盗犯人のように所有者との関係で占有を維持する利益を認めることが出来ない場合には除外すべきと考える。 また民事訴訟を経ないと確定しがたい事案についても、法的紛争解決制度を利用すべきであり、自力救済禁止原則を根拠に財産犯の保護法益に含めるのは妥当ではないと解する。
参考: 山口厚(2010),p189-191 |
第五款 占有の取得
1 窃取
占有の移転 占有の取得 第三者領得
第三者領得について明文には規定がないが窃盗罪になりうると解する。 行為者自身が領得するのと同視しうる場合に限られる、単に占有者に損害を加えるためだけに第三者に占有を移転する場合は除外されることになると解する。
参考: 山口厚(2010),p192 |
2 未遂成立時期
意義 判例
3 既遂時期
意義 判例
第六款 不法領得の意思
1 総説
判例・通説 主観的要件
2 判例・学説の動向
(1)判例 教育勅語 一時使用 排除意思 使用意思 使用窃盗 毀棄
(2)学説 排除意思+使用意思 片方 不要
判例:不法領得の意思が必要。排除意思、利用意思の双方が必要 ↓ 反対説:排除意思、利用意思の片方のみ 不法領得の意思不要説 ↓ 不可罰の一時使用と可罰的な窃盗罪、窃盗罪と毀棄罪の区別を適切にするために排除意思、利用意思双方が必要であると解する(判例の立場が妥当である)。 ↓ 排除意思は可罰的な利用妨害なる法益侵害を惹起しようとする意思であり、主観的違法要素である。 参考: 山口厚(2010),p195
※利用意思を不要とすると毀棄・隠匿の意思で財物を奪取しても窃盗罪が成立する。 ↓ 毀棄罪は財物の占有の移転を伴わない場合にのみ成立することになり、また隠匿行為はすべて窃盗罪として可罰的なものになってしまい妥当ではない。 ↓ 窃盗罪と毀棄罪の実質的な区別のために利用意思は必要である。 参考: 山口厚(2010),p199 |
3 一時使用
(1)判例の動向 乗り物の一時使用 返還意思の有無 自動車 秘密文書 (2) 排除意思 反対説 客観的な利用妨害 主観的違法要素:可罰的な利用妨害を惹起しようとする意思 返還意思のない一時使用 返還意思があっても使用可能性を妨害する場合 物に化体された価値の消耗をする場合 排除意思
4 毀棄罪との区別
(1)判例の動向 経済的用法 (2)利用意思の意義 利用意思不要(→2 判例・学説の動向)
利用意思を不要とすると毀棄・隠匿の意思で財物を奪取しても窃盗罪が成立する。 ↓ 毀棄罪は財物の占有の移転を伴わない場合にのみ成立することになり、また隠匿行為はすべて窃盗罪として可罰的なものになってしまい妥当ではない。 ↓ 窃盗罪と毀棄罪の実質的な区別のために利用意思は必要である。 ↓ 利用意思とは財物から生ずる何らかの効用を享受する意思であると解する。 この立場からは、法益侵害行為が強力な動機により行われるため責任が重いする責任要素と解する。 ↓ そのため窃盗罪は毀棄罪よりも法定刑が重いと解する。 (遺失物等横領罪が毀棄罪より軽い:占有侵害が存在しないため違法性が軽くなっており、誘惑的であるため責任も軽い) 参考: 山口厚(2010),p199-200 |
第七款 不動産侵奪罪
1 総説
2 客体
(1)他人の不動産 (2)占有
3 侵奪 実質的な支配の侵害 他人の占有の排除 賃貸 状態犯 制定前 質的変化
第八款 親族間の犯罪に関する特例
1 総説
刑の免除 親告罪 不均衡
2 特例の趣旨・根拠
政策説 違法性減少 責任減少
反対説:親族間では所有・占有関係が合同的であり区別が不明確であるため法益侵害が軽微であるため違法が減少する 反対説:親族間であれば誘惑的であるから責任が減少する ↓ 同居していなくとも所有・占有関係が不明確でない場合でも適用されるから違法減少を一般的に肯定しうるか疑問。 また、同居していない親族間では親告罪とされているが(244条2項)この場合所有・占有関係の区別が不明確さという事情はない。 更に責任減少を基礎付ける事情も類型的には認められない。 ↓ 親族間の紛争には国家は介入を控えるという政策説による説明が妥当
参考: 山口厚(2010),p206 |
3 適用要件
(1)親族の意義 民法725条 内縁 (2)親族関係が必要な人的範囲 学説・判例 所有者と犯人 占有者と犯人 所有者・占有者と犯人 占有説
(政策説を前提に)所有者及び占有者と犯人との間に親族関係があれば紛争は親族内にとどまっていると言える。 ↓ 所有者及び占有者と犯人との間に親族関係がある場合に適用される
参考: 山口厚(2010),p208 |
4 錯誤
違法性減少説 責任減少説 政策説
第三節 強盗罪
第一款 総説
1項・2項 拡張類型 準強盗罪
第二款 客体
1 財物
不動産 1項 2項
詐欺罪・恐喝罪・横領罪で不動産が財物ないし物に含まれており、それとの整合性から不動産を財物に含まれていると解する。 ↓ 登記名簿による法律的支配があれば不動産に対する占有を肯定することが出来る ↓ 暴行・脅迫により不動産登記名簿を取得する場合、1項強盗が成立
参考: 山口厚(2010),p210-211 |
2 財産上の利得
(1)移転性のある利益 移転罪 情報やサービス (2)不法な利得 判例
第三款 暴行・脅迫
1 総説
2 犯行抑圧の手段
恐喝罪との区別 判例 客観的判断
被害者の反抗の抑圧の有無により恐喝罪(交付罪)と強盗罪(強取罪)の区別がなされる ↓ (1)一般に被害者の犯行を抑圧するに足る暴行脅迫があったが被害者の犯行が抑圧されずに財物の移転 ↓ 強盗未遂と恐喝既遂の観念的競合が成立(大阪地裁平成4年9月22日)。 ↓ (2)一般に被害者の犯行を抑圧するに足りない暴行脅迫だったが被害者が臆病で犯行が抑圧され財物の移転 ↓ 実際に抑圧された以上は強盗既遂を認める。
参考: 山口厚(2010),p212 |
ひったくり
3 暴行・脅迫の相手方
乳児 占有補助者
第四款 強取
1 総説
暴行・脅迫 反抗の抑圧 逃走 気づかない間に取る 逃走中に落とす
2 財物奪取後の暴行・脅迫
占有の移転が先にあり、その後に暴行・脅迫で保持 ↓ ↓ 暴行・脅迫が財物奪取の手段になっていないため1項強盗は成立しない。2項強盗または事後強盗罪の成立
参考: 山口厚(2010),p217 |
3 暴行・脅迫後の領得意思
強盗以外の目的で暴行・脅迫。その後領得意思が生じた場合 ↓ 財物に奪取に向けた新たな暴行・脅迫が必要である(近時の下級審判決:必要説)。 (準強姦罪(178条2項)のような規定がない以上不要説は妥当ではない。) 既に反抗が抑圧されているため、通常の場合に比して程度の低いもの、反抗抑圧状態の維持・継続させるもので足りる。
参考: 山口厚(2010),p217-218 |
第五款 不法利得
1 利益の移転 (1)不法利得 移転の有無の不明確さ (2)処分行為
例:債権者を殺害をして債務の返済を逃れる、運転手を暴行をして支払い請求できない状態にする ↓ 強盗罪には被害者の反抗の抑圧が必要 ↓ 意思が抑圧されれば処分行為をなす余地はないから不要説が妥当。
参考: 山口厚(2010),p220 |
(3)財産上の利益の移転 債権者の殺害 相続人・被相続人の殺害
2 財物詐取・窃取後の暴行・脅迫
(1)財物窃取後の暴行・脅迫
例:無銭飲食のあと、暴行・脅迫で支払いを逃れる ↓ 物の販売により生じた代金債権は物とは別個保護に値する ↓ 1項詐欺と2項強盗の成立、重い後者の包括一罪とする。
参考: 山口厚(2010),p222 |
(2)財物詐取後の暴行・脅迫
財物詐取→返還請求に対して暴行・脅迫→2項強盗が成立するか、する場合に窃盗との関係
判例:窃盗と2項強盗の成立、重い後者の包括一罪とする。 学説:変換請求権は窃盗より侵害された所有権の内容につき、不可罰的事後行為 ↓ 独立して処罰の対象にならない
参考: 山口厚(2010),p223 |
第六款 事後強盗罪
1 総説 結合犯
2 構成要件
(1)窃盗 強盗も含む 身分犯? (2)暴行・脅迫 相手方 第三者 警察 犯行現場・機会の継続中
3 未遂・予備
(1)未遂 窃盗の未遂・既遂 暴行・脅迫の未遂・既遂 (2)予備 予備の可罰性
反対説:条文の位置、不可罰である窃盗予備を処罰することになるため否定 ↓ 事後強盗の意思がある場合には単なる窃盗の予備とはいえない。 居直り強盗の未必的意思がある場合について否定するのは妥当ではない ↓ 予備も可罰的
参考: 山口厚(2010),p227 |
4 共犯
(1)先行者が窃盗(未遂)・後行者が暴行・脅迫のみに関与 事後強盗犯の構成 真性身分犯 不真性身分犯 複合身分犯 結合犯 (2)身分犯の難点 結合犯
反対説:事後強盗犯を身分犯とする見解 暴行・脅迫が事後強盗罪の構成要件該当行為で暴行・脅迫罪の加重類型とする見解 ↓ 身分としての窃盗を窃盗未遂に含むと、窃盗が未遂、その後の逮捕免脱・罪跡隠滅目的で暴行脅迫をすると事後強盗が既遂になり妥当ではない。 窃盗既遂に限定をしても、先行の窃盗が未遂の場合には事後強盗が処罰範囲から脱落し妥当ではない。 (先行する窃盗が未遂であれば財物の変換請求権が存在しないためまた加重類型とすることも妥当ではない。) ↓ 単なる責任の加重により強盗罪・同未遂罪と同様な可罰性が肯定する理由を基礎付けられるかは疑問 新たな窃盗罪が別途成立する(事後強盗罪と併合罪となる)と解さざるを得なくなる ↓ 事後強盗罪は窃盗罪と暴行・脅迫罪の結合罪であると解するのが妥当 (暴行・脅迫のみ関与したケース・・・承継的共犯の成否から決せられる。否定説:暴行・脅迫罪の共犯)
参考: 山口厚(2010),p229 |
第七款 昏酔強盗罪
1 総説
2 構成要件
昏酔 意識喪失
第八款 強盗致死罪
1 総説
2 主体
強盗既遂 強盗未遂 手段説 機会説・判例 密接関連説 拡張された手段説
機会説:強盗致死傷罪の成立範囲を拡張しすぎる (強盗罪と死傷を惹起した罪の観念的競合を超えた)重い法定刑が規定されていることを正当化できない 密接関連説:限界が不明瞭 ↓ 実際上問題となるのは238条所定の目的で行った暴行・脅迫から死傷が生じた場合の処理 ↓ 強盗の手段である暴行・脅迫 事後強盗類似の状況における暴行・脅迫 から死傷が生じたケースに強盗致傷罪の成立すると解する。
参考: 山口厚(2010),p232-233 |
3 致死傷の原因行為
(1)主観的要件
(2)死傷について故意がある場合 殺人と強盗(致死)の観念的競合? 二重評価
4 原因行為の主観的用件
機会説 手段説 密接関連説
5 障害の程度
限定説 非限定説
6 強盗殺人罪における強取の範囲
行為の連続性・意思の単一性
7 未遂
死傷の結果が生じたが強盗が未遂のケース 傷害の故意で傷害が発生しないケース
第九款 強盗強姦及び同致死罪
1 強盗強姦罪
強盗 強姦 結合犯 強盗未遂 強姦の既遂・未遂 準強姦 強盗後に強姦の意思 強姦の後に強盗
2 強盗強姦致死罪
(1)強盗強姦致死 結果的加重犯 死の故意 死後姦淫
反対説:強盗強姦致死について死の結果についての故意を含めない。 ↓ この立場からは (1)強盗強姦致死罪と殺人罪の観念的競合 (3)強盗殺人罪と強盗強姦罪の観念的競合(強盗殺人罪:機会説が前提) ↓ (1)は死の結果を二重評価 (2)は強盗致死罪よりも刑が軽くなる (3)は強盗の二重評価 ↓ (強盗致死傷罪について拡張された手段説から)刑の均衡から強盗強姦致死について死の結果についての故意がある場合を含むとするのが妥当。
参考: 山口厚(2010),p238-239 |
(2)強盗強姦致傷
第四節 詐欺罪
第一款 総説
1 詐欺罪の基本構造・性格
交付 占有者の意思に基づく占有移転 瑕疵ある意思 電子計算機使用詐欺罪・準詐欺罪(246の2) 準詐欺罪
2 国家的法益と詐欺罪の成否
脱税 旅券などの取得 制御機構の侵害
第二款 客体
1 財物
他人の占有する他人の財物 不動産 登記 法律的支配 事実的利益の支配
2 財産上の利得
(1)移転性のある利益 移転 元の占有者の法益侵害 情報やサービス 情報の非移転性 有償のサービス 2項詐欺 (2)不法な利益 民事上保護されない利益 cf.窃盗罪 (3)物の請求権の取得 引渡し請求権 1項詐欺の未遂 不動産の窃取 (4)債務履行の一時猶予 債権の財産的価値の減少の要否 (5)支払いの繰上げ 判例
第三款 欺もう行為
1 総説
(1)錯誤の惹起 錯誤の惹起 交付行為 物・利益の移転 因果経過 判断基準 個別事情 (2)人による交付行為 機械の不正操作 ATM 窃盗 (3)対象 重要な事実 錯誤と交付行為に条件関係
2 不作為
作為義務 保証人的地位 不動産の抵当権の登記の告知義務? 信用状態・営業状態の告知義務 挙動による詐欺
3 つり銭詐欺の法的評価
第四款 交付行為
1 総説
意思に基づく交付 強取との区別 交付意思 直接性の要件 占有の弛緩 第三者 特別な関係
2 交付意思
(1)意思に基づく占有移転 窃盗との境界 意思内容 完全な認識 物の交換 (2)交付意思の内容 交付する物自体に錯誤がない場合 試乗車 店先にでる認識=占有の弛緩 黙示の意思表示 交付する物自体に錯誤がある場合 意識的交付行為説 無意識的交付行為説
被偽もう者の移転意思に基づき物・財産上の利益の移転をした場合、移転する物・財産上の利益の価値・内容・数量に錯誤があっても、意識に基づく占有移転を認めて、交付行為の存在・詐欺罪の成立を肯定するのが妥当。
3 キセル乗車の法的評価
(1)2項詐欺の肯定・否定 肯定の場合乗車下車のいずれか (1)否定説 (2)乗車駅基準説 (3)下車駅基準説
否定説 乗車駅:乗車券は有効、乗り越しを申告する義務はない=偽もう行為の要件を欠く 下車駅:の改札口係は未払い運賃を知らない=交付行為の要件に欠く ↓ 乗車時点では挙動による偽もうといいうる。下車時点では交付行為の要件が厳格すぎて妥当でない。 ↓ 反対説:乗車駅基準説 ↓ 購入をした乗車券は有効であり、乗り越しの申告義務はないが乗車時点では挙動による偽もうといいうる。 しかし、交付行為による役務の移転を肯定できない。 ↓ (下車駅基準説) 清算すべき運賃があるのにそれを秘して改札口を通る行為=改札口係員に対する偽もう行為 改札口係員が通過させ、支払いを免れる行為を交付行為と解する。
参考: 山口厚(2010),p257-258 |
4 三角詐欺
(1)被偽もう者と被害者の分離 財産を処分しうる地位・権利 (2)訴訟詐欺 裁判所 (3)クレジットカード 否定説 判例 学説
判例:加盟店を非被偽もう者=被害者とする1項詐欺(福岡高判・昭和56年9月21日等) ↓ 加盟店:カード会社から代金の支払いを受けることが出来る:取引の目的は達成していて、被害者とするのは疑問がある。 ↓ 他方、カード会社は錯誤がなくとも支払いを要するから錯誤に基づく交付行為を認めることが出来ない。 ↓ 加盟店はカード会社から支払いを受けることが出来るから「財産を処分しうる権能または地位」があると言える。 その地位に関する限りで顧客の支払い意思や能力に無関心ではいられない ↓ (疑問はあるものの……)加盟店にたいする偽もう行為、錯誤を認めることが出来る。 ↓ 加盟店を偽もうをして、カード会社から加盟店に代金相当額の支払いを受ける地位を与えた点で第三者に対する交付としての詐欺罪を肯定することが出来る。 (加盟店は本来代金を払う相手であるから第三者に交付させる詐欺罪を肯定できる) ※商品購入(上記の地位を与えた)時点で既遂
参考: 山口厚(2010),p261-262 |
第五款 物・利益の移転
1 財産の移転と法益関係的錯誤
2 証明書の不正取得
3 不法原因給付と詐欺
4 権利行使と詐欺
第六款 電子計算機使用詐欺罪
1 総説
2 構成要件
第七款 準詐欺罪
1 総説
2 構成要件
第五節 恐喝罪
第一款 総説
第二款 客体
1 財物
2 財産上の利益
第三款 恐喝
1 総説
2 暴行
3 脅迫
第四款 交付行為
1 総説
2 交付行為の意義
第五款 物・利益の移転
1 総説
2 権利行使と恐喝
第六款 他の犯罪との関係
第六節 横領罪
第一款 総説
1 保護法益
2 横領3罪の関係
3 親族間の犯罪に関する特例
第二款 客体
1 総説
2 物
3 占有
4 物の他人性
第三款 横領行為
1 総説
2 不法領得の意思
第四款 共犯
第五款 財数
1 穴埋め横領
2 横領物の横領
第六款 詐欺罪との関係
1 領得意思による集金
2 欺もうによる横領
第七款 業務上横領罪
1 加重規定
2 業務上の占有者
3 共犯
第八款 遺失物等横領罪
1 基本類型
2 客体
3 他の犯罪との関係
第七節 背任罪
第一款 総説
1 背任罪の独自性
2 背任罪の罪質
3 全体財産に対する罪
第二款 主体
1 総説
2 他人の事務
3 委託された事務
第三款 任務違背行為
第四款 図利加害目的
1 総説
2 図利加害目的の内容
第五款 財産上の存在
1 経済的見地からする評価
2 全体財産の減少
第六款 他の犯罪との関係
1 詐欺罪との関係
2 委託物横領罪との関係
第八節 盗品等に関する罪
第一款 総説
1 盗品等関与罪
2 罪質
第二款 客体
1 総説
2 追求権
3 同一性
第三款 行為類型
1 総説
2 無償譲受け
3 運搬
4 保管
5 有償譲受け
6 有償処分のあっせん
第四款 罪数・他の罪との関係
1 盗品等関与罪相互間
2 本犯と盗品等関与罪との関係
3 盗品等有償処分あっせん罪と詐欺罪の関係
第五款 親族等の間の犯罪に関する特例
第九節 毀棄・隠匿罪
第一款 総説
1 罪質 2 毀棄の概念
第二款 毀棄・隠匿罪の諸類系
1 公用文章等毀棄罪
2 私用文章等毀棄罪
3 建造物等損壊罪・同致死罪
4 器物損壊罪
5 信書隠匿罪
第三款 境界損壊罪
1 総説
2 構成要件
<参考文献>