国家賠償法
・写真集の輸入→税関長:関税法69条の11第1項7号に該当する通知(本件通知)→取り消し訴訟→取り消しの判決 →国賠請求 ・本件通知の半年前には同様の写真が「関税法69条の11第1項7号に該当する」との最高裁判決があった。 ・本件通知について(1)公権力発動要件欠如説 (2)職務行為基準説から検討
参考:土田伸也 (2016) p.266ff |
<ノート>
違法の意味について(反対説:行為により生じた結果が法の許容するものか否かで検討)
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法律による行政の原理:法規範に従って行政を行う
この点に従い判断をすべきであり行為不法説が妥当
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公権力発動要件欠如説(学説?)と職務行為基準説(判例)
【2】公権力発動要件欠如説の場合
公権力の行使:法律による要件を満たしていたかで検討。充足していないにも関わらず公権力が発動された場合には違法とする。
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(1)原因行為、(2)法律要件、(3)法律要件を満たして公権力の発動がされたかを検討。
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取消判決の効果:公権力発動要件欠如説の場合、違法性同一説(取消違法=法律要件を満たしていない)
【3】職務行為基準説(判例)の場合
上記(1)から(3)に加えて(4)通常尽くすべき注意義務を尽くしていたかを更に検討
する。
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取消判決の効果:違法性相対説(通常尽くすべき注意義務を尽くしていたか、の要素はまだ検討されていない)
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最高裁判決(メイプルソープ事件、jawp?)があったことを踏まえて本件通知を行った=通常尽くすべき注意義務を尽くしていた=国賠法上の違法性はない。
【4】職務行為基準説(判例)の問題点
・国家賠償訴訟請求の法秩序維持機能の脆弱化
職務上の注意義務違反がない場合には、法律の要件を満たしていなくとも適法になる。
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法規範に従って行政を行うか従い判断をすべきであり行為不法説のチェックが弱くなる。
・過失の要素を違法性の要素に取り込むという構成
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1条1項:「故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたとき」
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違法の要件とは別に故意・過失の要素を設けている。
参考:土田伸也 (2016)、p.266ff
cf. 中原茂樹(2015)、p.400ffの解説
職務行為基準説:過失と違法を一元的に審査をする=民法不法行為法(民法709条)と共通→損害の公平な填補という損害賠償法制度の側面を重視
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国賠訴訟では職務上の注意義務違反の判断がされ(→違法性相対説)、国賠法上の過失
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職務上の注意義務違反がある場合、抗告訴訟における違法性が前提
公権力発動要件欠如説:過失と違法の二次元的に審査。
注意義務違反=過失の問題
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違法行為抑止・違法状態排除機能を意図している。
「違法だが過失がない」という判断も。
例 最高裁平成3年7月9日:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=52770
・高速道路で動物が侵入→避けるために中央分離帯に衝突、重症→国賠請求 ↓ 被告&主張・反論
・以前から動物が侵入、動物が死ぬ事故はあるが死亡事故はなし。他の区間ではあり。対策に1億円かかる。 ・動物愛護団体などから対策の要請はあったが全国的にも一般的ではない。動物注意の標識はあった。
参考:土田伸也 (2016) p.276ff 最高裁平成22年3月2日判決:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=38526 高知落石事件=最高裁 昭和45年8月20日:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54103 |
・被告について。
高速道路:国の管理
費用負担者:国と県
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国と県両方可能。
・主張
2条の「(1)道路、河川その他の公の営造物の(2)設置又は管理に瑕疵があつたために(3)他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。」
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(1)は国又は公共団体によって直接公目的に供されている(判例)
(2)の検証。
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(2)について、無過失責任(高知落石事件)のため過失の主張は不要。
設置又は管理に瑕疵:通常有すべき安全性の欠如(判例)。
※参考「国家賠償法二条一項の営造物の設置または管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国および公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するを相当とする。(高知落石事件)」
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個別具体的に諸般の事情から総合判断(夢野台高校校庭転落事件)
諸般の事情:営造物の構造、用法、場所的環境、利用状況
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高速道路:人の侵入が予定されていない。動物の侵入などで事故が起こりやすい
他の箇所で死亡事故:予見しやすい
人工公物:予算の制約は瑕疵の否定にならない(判例:大東水害訴訟)
・被告側の主張
適切な運転で事故の回避は可能。現実に同区間で過去に死亡事故がない。
防止対策も一般的ではない=瑕疵にならない。
道路標識の設置
・参考 最高裁平成22年3月2日判決
北海道内の高速道路で自動車の運転者がキツネとの衝突を避けようとして自損事故を起こした場合において,(1)走行中の自動車が上記道路に侵入したキツネ等の小動物と接触すること自体により自動車の運転者等が死傷するような事故が発生する危険性は高いものではないこと,(2)金網の柵を地面との透き間無く設置し,地面にコンクリートを敷くという小動物の侵入防止対策が全国で広く採られていたという事情はうかがわれず,そのような対策を講ずるためには多額の費用を要することは明らかであること,(3上記道路には動物注意の標識が設置されていたことなど判示の事情の下においては,上記(2)のような対策が講じられていなかったからといって,上記道路に設置又は管理の瑕疵があったとはいえない。
・予算制約が免責事由になりうる? 最高裁 昭和45年8月20日との整合性
「本件道路には従来山側から屡々落石があり、さらに崩土さえも何回かあつたのであるから、いつなんどき落石や崩土が起こるかも知れず、本件道路を通行する人および車はたえずその危険におびやかされていたにもかかわらず、道路管理者においては、「落石注意」等の標識を立て、あるいは竹竿の先に赤の布切をつけて立て、これによつて通行車に対し注意を促す等の処置を講じたにすぎず、本件道路の右のような危険性に対して防護柵または防護覆を設置し、あるいは山側に金網を張るとか、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石があるときは、これを除去し、崩土の起こるおそれのあるときは、事前に通行止めをする等の措置をとつたことはない、というのである。(中略)本件道路における防護柵を設置するとした場合、その費用の額が相当の多額にのぼり、上告人県としてその予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできないのであり、その他、本件事故が不可抗力ないし回避可能性のない場合であることを認めることができない旨の原審の判断は、いずれも正当として是認することができる」
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他に対策手段があったのにも関わらず、何も対策がされていない場合に、その一つの対策方法について、「その予算措置に困却するであろうことは推察できるが、それにより直ちに道路の管理の瑕疵によつて生じた損害に対する賠償責任を免れうるものと考えることはできない」
<参考>
条文 |
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第一条1項 |
国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。 |
第一条2項 |
前項の場合において、公務員に故意又は重大な過失があつたときは、国又は公共団体は、その公務員に対して求償権を有する。 |
第二条1項 |
道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。 |
第二条2項 |
前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。 |
第三条1項 |
前二条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。 |
第三条2項 |
前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。 |
第四条 |
国又は公共団体の損害賠償の責任については、前三条の規定によるの外、民法 の規定による。 |
第五条 |
国又は公共団体の損害賠償の責任について民法 以外の他の法律に別段の定があるときは、その定めるところによる。 |
第六条 |
この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。 |
<参考文献>
土田伸也 (2016):『基礎演習 行政法』、日本評論社
土田伸也 (2014):『基礎演習 行政法』、日本評論社
中原茂樹(2015):『基本行政法』、日本評論社
中原茂樹(2013):『基本行政法』、日本評論社